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こうの史代『夕凪の街 桜の国』

● 小学校のころ『はだしのゲン』を読んで、高校時代修学旅行で訪れて深い深い印象を胸に刻んだ広島原爆を描いたお話。ページ数は少ないけど(で、高い)、これは秀作である。

 柔らかいタッチで描かれた愛らしい女性。彼女がまっくろな血を吐いて死んでいく物語は、穏やかだけど怒りに満ちていて、静かであたたかいけどとても残酷で。『はだしのゲン』の「この惨劇を見ろ!」という激しさはなく、たんたんと進んでいく日常の中にスルリと死が入り込んでいるから、読みやすいしとっつきやすいのに深いという効果が。

 そして彼女の死から時を経た遺族の物語『桜の国』がいいんですよ。
 ふと描かれた墓石に刻まれた人の名前と八月六日の文字。
 悲惨な目にあっても同情どころか差別がうまれ、今も消えていないという現実。
 こういうのを信じる思いが浄化するお話と見せておいて、差別というのを突きつける鋭い作品ですな。柔らかいけど鋭い刃であると。

 何度も何度も読み返すとじわじわくるものがある。

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