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新版Kizurizm: 辻信太郎『これがサンリオの秘密です。』

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辻信太郎『これがサンリオの秘密です。』

● 個人的なことですが、すっかりサンリオ信者になってはや数年。ここ最近はもはや中毒です。で、クロミコレクターだからという理由があってのショップ通いが、だんだんと別の楽しみを見出すようになりました。それはサンリオのユニークな商品展開や企業としての創意工夫です。サンリオ製品は原則国産ですが、それは外国人がお土産として買ったとき、それが日本産でなかったらイヤだろうという配慮ゆえだとか。辻さんは他の国を見下すタイプではなく、純粋な愛国心の持ち主のようで、歌舞伎や伝統工芸をサンリオグッズによって広めようという志を持っています。ちなみに今夏のサンリオのキャンペーンは大好きNIPPONです。
 こういう長い目をもって、あるいは相手のことを考えた企業としての姿勢が黒字につながっているのだと感心するわけですよ。グッズもクロミ、ルロロマニックなんかはゴシック要素を取り入れていて、これが実にニッチなニーズにこたえていてかわいらしい。キティも今じゃチャーミーだけじゃなく、お目立ちキティやデザイナーコラボがあったり、リトルツインスターズ(キキララ)はゆうこりんとコラボしていたり、実に挑戦的で斬新な展開をしています。店員さんの教育もいきとどいていて、気持ちよく買い物ができます。サンリオはメルヘンの皮を被ったすさまじい智恵の結晶です。

● そんなサンリオの社長・辻信太郎氏の著作が本書ですが、もう読んでいて興奮しましたね。私の中では大山倍達の著書に匹敵します。企業理念の巧みさは現代版『孫子』といっていいほど見事。辻さんは中国古典を自家薬籠中のものにしており、息を吸うように当たり前のやり方で実践しています。日本最強の軍師は辻さんだと思いますね。彼はこう述べておられる(意訳というか要約ですよ)。

「常に勝ち続ける方法はありません。そんなものを私は知りません。それにたとえ勝利をおさめても消耗はつきまといます。では負けないためにはどうするか? なるべく戦わないのが一番です」

 これは『孫子』にもあることなんですね。百戦百勝は悪逆非道の代名詞で、勝つということにも犠牲がつきものだから、百回戦う時点で悪いことなのです。本当に仁義を知る名将は、まず戦いを避ける……というわけです。
 似たようなことは武術にもあてはまります。以前、格闘技の達人との対話集を読んだんですね。そこでバスジャック少年にでくわしたらどうするかという質問が出たとき、立ち向かうと答えた達人はいなかった! 皆「様子をうかがう」「説得する」といった答えで、いきなり真正面からというのはないと。達人だからこそ、戦いは水物で必ず勝てるとは思えないのでしょう。

 このほかにも辻さんは、数手先を読む行動をとっていますがその原理は「社員のため・お客様のため」です。社員に迷惑をかけることは避ける。お客様にとってよくないことはしない。短期的に見ると赤字でも、長期的に見るとこれが当たる。先見の明というのは、予知能力や直感ではなく思いやりからうまれるのだと感心しました。『孫子』もそうなんですよ。あれは読めばわかりますが、奇襲や作戦より、いかに兵士を愛してやる気を引き出すかという気構えのほうを、むしろ長々と説いているのです。

● こういうサンリオでイメージするあたたかさのみならず、マイメロアニメ版にあるようなアナーキーな部分も垣間見えるのが本書のすごいところ。まず章タイトルが「窃盗暴力以外ならなんでもあり」。つまりアニメ版マイメロですね、よくわかります。(注・ここの引用は要約や略があり、正確ではありません)

「サンリオピューロランドに来たお父さんがつまらさそうにしている。そこで私は考えました。ダンサーをセクシー路線にしてみました。するとお父さんがいきいきしだしました!」

→さすがだ……その発想はなかったわ。確かにピューロではきれいなおねえさんがたくさん踊っているそうです。(参照

「男を選ぶとき、顔で選ぶか心で選ぶか。心といっても、愛情がくどければいやになってきます。顔で選んでも、どんな美男子だって飽きてきます。実はこれは三択問題で、身体で選ぶが用意されています。これが正解。身体の相性で選ぶのがいちばんいい。これは重要なことです。えっ、なんでかって? そんなこと文字では書けません。うちの女性社員なら詳しく説明することですが。念のため言っておきますが、これはセクハラではありません」

→……深いッ……これは深すぎるだろ……。でも言われてみればそんな気がする……。

「誰が誰を愛そうと、その愛に罪はない。ひとりの男が二人の女を愛したら、世間では不純とされるでしょう。でも理屈ではなかなか解決できない問題です。不倫がダメとはいえない理由はここにあります」

→これも深淵だなあ。

「愛には四つの形があります。あなたはどれを選びますか?
1.自分も相手も楽しく、幸せになる恋愛。
2.自分は幸せだけど、相手に我慢を強いる愛。
3.相手の幸せのために耐える自己犠牲の愛。
4.自分も相手も幸せになれない破滅的な愛。

4を選ぶ人はいないでしょう。1は理想的すぎるので除外します。では2と答えますか? ところが私は3です。なぜなら相手に愛されるころを望むよりも、自分が相手を愛することのほうが幸せだからです。愛は複雑ですね」

→ああー、これはほんとそう。耐えれば耐えるほど自分の愛は美しいとか、純粋だとか、そう思う人って特に女性では多いと思う。だけどそれは間違ってる! 不満があるなら、黙っていないでちょっと直して欲しいと言ってみるとかすればいいし(でも勝手にフィギュアを捨てたりしちゃダメだけど)。自分が幸せになれない恋愛にしがみついていたら、あるいは相手を自分の愛だけが救えるとか信じこんでいちゃ絶対ダメ! 自分がまず幸せになろうと思うのは、エゴでもなんでもない。じゃなきゃ、生きている意味なんかないし。

 マイメロのキャラソンは、歌詞が結構いいんだけど……「アタイはクロミ!」の歌詞こそサンリオじゃないかと思ったり(一部抜粋です)。

ワガママじゃない スナオなだけさ
好きになったなら 脇目ふらずにまっしぐら
一途なオトメ たまに泣いちゃう
覚えといてよねっ!
アタイはクロミ

好きなモノしか 目に入らない
何がいけないの? それがアタイの生き方さ
いい子じゃなくて 悪かったわね
覚えといてよねっ!
アタイはクロミ


 ここで引用したのは、辻さんのワイルドな部分だけですが、前半部は社長はつらいよという苦労話と責任感について語っています。会社と社員に対して責任を持つ大人の部分と、一方でわがままな子供みたいな部分があるからこそ、辻さんとサンリオは成功しているんじゃないかと感動したわけです! 私は辻さんを尊敬せざるをえません。素晴らしいね、サンリオは。ホント凄いよ。
 あとやはり少しいい意味で色好みな発想ができるほうが、人として深みもあるしおもしろいことが考えられるんじゃないかと思いました。

 とりあえず月末、さるイベント目当てでサンリオピューロランドに行ってきます。ああ、楽しみだ。チケットとれませんでしたorz

これがサンリオの秘密です。これがサンリオの秘密です。
(2000/03)
辻 信太郎

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