新版Kizurizm

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リヴァルと呼び合う男ども 三度目の『明治断頭台』

● 三度目です。
 女性の山風ファンにとって最強の男といえば我らが柳生十兵衛様です。彼の魅力はウダウダ書くまでもありませんが、その潔癖ぶりにあると思います。

「十兵衛先生はいいですね、他の作家なら絶対掘の女と寝てます。でも照れたりしつつあくまで先生に徹するところが素晴らしい」
「山風ってほんとうにいやらしくない作家ですよね。立場に乗じて女に手出ししないって、最高の男です。しかも女を立てて仇討ちの手助けをしているのがいい」

 この馬鹿女どもが寝るだの寝ないだのほざきやがってとおっしゃりたいでしょうが、いましばらく。さらには山風のどこがいやらしくないのだという点ですが、いやらしさというのは性的云々ではなく男の都合だけで考えないところじゃないかと思うわけです。
 たとえばヒロイン数名が主人公に惚れていて、あぶれた女が自殺する。あるいは操を通して独身のままでいる。こういうのを「とてつもなくいやらしい」と嫌う女性読者は多いと思います。男のロマンだけで女に一方的に貞操だの独身だのを押しつけ、不幸にしても構わないという姿勢はやっぱりカチンとくるものだと思うんですよね。

 まあ脱線はこのあたりで。

● では十兵衛先生以外に女性ファンがメロメロといえば、『警視庁草紙』の千羽兵四郎、『明治断頭台』の香月経四郎、『明治十手架』の原胤昭あたりではないかと思います。あ、『ラスプーチンが来た』の明石元二郎もいいな。ともかく明治ものは好男子がごろごろしています。男が惚れる男でもあり、女性ファンも惚れるタイプというか。

 今回の香月経四郎は川路利良とセットになるとさらに女性の心をがっちり掴むことになると思います。別にお耽美というわけではありませんが(薩摩出身という点にもあまり突っ込まない)、お互いはぐれもので「リヴァル(好敵手)」と呼び合い、認めないながらもどこか微妙。しかも香月は妖艶な美丈夫で川路ももやのかかったような笑み。この空気はたまらんものがあるのではないでしょうか。香月が涙をはらはらとこぼすのを見てはっとする川路とか云々。いや、でもべつにお耽美ではないんです。ヒロインもちゃんといますし。
 だがそこがいい。正面切ってHOMOるのは『逆艫試合』でいいから。

 香月は凄艶なイメージがすごくありますが、美形と書いてあるのはほんとうに数カ所だけ。台詞や所作と思考回路が水際立っているので、しつこく美形と書かずともそういう印象にあるんですよねえ。さすがだ山風。
 今回気付いたんですが、香月の造形は吉川英治の佐々木小次郎・曹操系ではないでしょうか。実写化するなら及川光博という表現でわかっていただければいいのですが。これの実写化をするとして、ネックは「斬首」シーンの多さかな。いっそ大河で『断頭台』、『波濤歌』、『警視庁草紙』をまとめて「川路大警視」なんてドラマにしてくれればいいのに。

明治断頭台―山田風太郎明治小説全集〈7〉 明治断頭台―山田風太郎明治小説全集〈7〉
山田 風太郎 (1997/08)
筑摩書房
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 以下はネタを割った記述なので、未読の方は飛ばしてください。
 香月と川路の関係は『妖異金瓶梅』の金蓮と応伯爵にもちょっと似ているかな。この共犯なのか犯人と探偵なのかわからない混沌ぶりってやっぱりいいですね。

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