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『山田風太郎育児日記』

● 嫁ぐ娘に山風が与えた、育児部分を抜粋した日記であります。時期的にはちょうど忍法帖ピークであり、我が子の成長を見守りながらあのエログロナンセンスを書いていたのかと思うと感慨深いものがあります。

 他人の育児記録なんざおもしろいもんかというと、そこはやはり山風なのでシャイでシニカル、とてもおもしろいのです。我が子の笑顔をニンガリと表現したり、「悪の愉しみ」と「悪の悲しみ」があると書いていたりするあたりが、山風だなあと。

 子供の夜泣きに辟易して葡萄酒を飲ませたり、徹夜麻雀ができないからと麻雀牌をぶつけたりするところもありますが、総じて彼は子煩悩です。「別に余が格段に甘いわけでもない」とか書きますが、ウソヲツケ。
 家族旅行もすれば、職業柄家にいる時間が長いから遊んでやるし、おもちゃも買ってあげています。子供の体重変化を心配していたり、医大卒業らしい知識でオロオロしたり、ほほえましいことこのうえありません。

 敢えてそっけなく書いているつもりでも、行間から愛情だだもれという、とんでもない萌え作品です。明治ものの子供がやけに愛くるしいのも納得がいきます。
 また「子供の名前は当用漢字にあって、字がきれいで、意味があって、発音がよくて、ほかに例がなくて、しかもあんまりヒネリすぎないもの」がいいと考えているあたりがいい! 世の親も名付けの時はこの感覚でいくべきだと痛感しました。
 子供の教育も「一流校を出るよりも、受験に失敗して負けん気を持つほうがむしろいい」と書いていたりして、山風らしい哲学が伺えて実によろしい。

 山風ツンデレ伝説に新たな章が見えてきた本といえましょう。あ、夫婦仲も素晴らしかった模様です。

山田風太郎育児日記 山田風太郎育児日記
山田 風太郎 (2006/07)
朝日新聞社
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